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トースターから、バターの甘く香ばしい香りがふわりと鼻腔をくすぐる。
お皿の上で黄金色に輝く、焼き立ての小さなクロワッサン。
子どもの頃、仕事帰りの父が時々お土産に買ってきてくれた、あの優しくて幸せな記憶の味がする。
つやつやとした綺麗な茶色と、何層にも重なった美しいひだのシルエット。
このクロワッサンを眺めていると、私はいつも、ある一匹のポケモンの後ろ姿を思い出してしまう。
ふさふさとした毛並みと、誇らしげに揺れる、愛おしいココアベージュのしっぽ。
そう、私の大好きな相棒、イーブイちゃんだ。
クロワッサンにたくさんの味のバリエーションがあるように、裏を返せば、彼女の未来にもまた、たくさんの選択肢が広がっている。
少しだけ舞台裏のお話をすると、このブログを立ち上げた当初、主役になる予定だったのは別のポケモンだった。
もともとは、旅を長く共にしてきた「色違いのピカチュウ先輩」を中央に据えるつもりで準備を進めていたのだ。
けれど、いざ自分の暮らしの家具や、お気に入りのアーストーンのインテリアや、日々紡ぐ文章の空気感を重ね合わせてみたとき。
驚くほど自然に、そして美しく空間に馴染んでくれたのが、イーブイちゃんだった。
背伸びをしない、日々の暮らしの「余白」にそっと寄り添ってくれるココアベージュの毛並み。
彼女がこのカフェの暖簾をくぐってくれた瞬間に、『ゆるポケ日和』の優しい空気感が完成したのだと思う。
私と彼女が出会ったのは、人生の30周年という大きな節目を迎えた、ある特別な誕生日のことだった。
「これからの人生を、一緒に歩んでくれる運命のイーブイちゃんを探そう」
そう心に決めて画面に向かったものの、その夜、私は深夜の睡魔に負けて、痛恨の「うっかりリセット」をしてしまう。
画面の向こうへ消えてしまった、最初に出会ったおくびょうな男の子のイーブイ。
自分の不手際が悲しくて、深夜にぽろぽろと涙がこぼれた。
けれど、奇跡はその後に待っていた。
仕切り直した画面の中に現れてくれたのは、「おだやか」な性格で、「しんぼうづよい」個性を持った、女の子のイーブイ。
しかも彼女は、その誕生日の特別な空気を纏った「運命の証」をその小さな背中に宿していたのだ。
あの失敗すらも、この子に出会うための伏線だったのだと、愛おしさが胸いっぱいに広がった。
世間では、イーブイといえば「どのタイプに進化させるか」という育成論や性能ばかりが語られがちだ。
けれど私は、出会ったあの日から、彼女の姿を一度も進化させていない。
それは、決して進化を「保留」しているわけでも、タイミングを逃しているわけでもない。
何者にもなれる可能性を、可能性のまま、愛おしく抱きしめていたいからだ。
そのままの姿で、今日も隣にいてくれることが一番うれしい。
未来を急いで決めてしまわない自由。
このイーブイちゃんは、ただ可愛いから選んだ相棒ではない。
ポケモン30周年を迎えた今も、こうして新しいブログを始めたり、新しい挑戦を続けたりしている私自身の「小さな選手宣誓」でもある。
40周年も、50周年も、未来がどうなるかは分からないけれど、未来を閉じないでいたい。
「私も、未来は無限大だと思う」
そう教えてくれる彼女の余白を見るたびに、大人になった私自身も、まだ見ぬ未来にワクワクできるのだ。
私のポケモンランキングの一位はミュウ、そして二位が、このイーブイちゃんだ。
もちろん、彼女から分岐していく「ブイズ」たちのことも、同じくらい愛している。
特に、朝の光を浴びて気高く輝くエーフィの美しさには、昔からずっと心を奪われ続けてきた。
面白いことに、私の妹は、静かな月夜に溶け込むブラッキー派。
早起きをして淹れたてのお茶を楽しむ朝型の私と、静まり返った深夜の時間を愛する夜型の妹。
そんな姉妹のささやかな性格の対比が、そのままエーフィとブラッキーの対になっているのも、我が家の愛おしい思い出のひとコマだ。
どんな姿を選んでも愛される世界。けれど、そのすべての原点は、やっぱりこの小さなイーブイちゃんの中に詰まっている。
10年後、20年後の未来。
私が今と同じようにゲームを開いて、ポケモンを続けているかどうかは分からない。
けれど、父が買ってきてくれたクロワッサンの香りを今でも鮮明に覚えているように、この子と過ごした温かい時間も、私の心からきっと消えない。
未来がどうなるか分からないからこそ、思い出は道標として静かに灯り続けてくれる。
もし未来のどこかで、新しくゲームの扉を開くことがあったなら。
私はきっと、真っ先にまた、あのココアベージュの小さな女の子を探すはずだ。
未来のことは分からない。けれど、それでいいのだと思う。
私の隣には今日も、何者にもなれる小さなイーブイちゃんがいる。
ただ、しっぽだけが少し誇らしそうに揺れていた。
四季お楽しみいただきありがとうございました
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