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OTHERS

香ばしいバターの香りがふわりと広がる。
フィナンシェは昔から大好きなお菓子。
少しだけ贅沢な気分になりたい日に、紅茶と一緒にひとつだけいただく。
黄金色の焼き色を眺めていると、なぜだかニャースを思い出す。
額の小判のせいかもしれない。
あるいは、金銀でおまもりこばんを持たせ忘れたまま四天王へ挑んだ私のせいかもしれない。
初代ポケモンには、おまもりこばんはまだ存在しなかった。
お金を増やしたいなら、ニャースやペルシアンの「ねこにこばん」に頼るしかなかった。
私も実際にニャースを育てていた。
……と言っても、効率よく育てていたわけではない。
当時の私はオツキミやまで迷子になるようなトレーナーだったので、草むらを歩いているうちにお金が貯まっていた、という方が正しいかもしれない。
草むらへ入り、野生のポケモンと戦い、少しずつお金を集める。
今思えばずいぶん地道な作業だった。
それでも当時は、
「モンスターボールが買える」
「キズぐすりが買える」
そんな小さな喜びが確かにあった。
ねこにこばんで手に入るお金は決して多くなかった。
それでもニャースは、小判を投げながら私たちの冒険を支えてくれていたのだ。
金銀で初めて「おまもりこばん」を手に入れた時のことは、今でもよく覚えている。
その姿を見た瞬間、
「これ、ニャースの小判みたいだな」
と思った。
実際には別物なのだろう。
けれど子どもの私には、どうしてもそう見えた。
ニャースが冒険についてきてくれるお守り。
そんな風に感じていた。
先頭のポケモンに持たせるだけで賞金が増える。
便利な道具だったけれど、私の中ではずっとニャースの代わりだった。
ねこにこばんを投げなくても。
草むらで働かなくても。
ニャースは小判の姿になって隣を歩いてくれている。
そんな気がしていたのだ。
GBA時代になると、お金の稼ぎ方も変わっていった。
ポケナビやバトルサーチャーでトレーナーと再戦できるようになり、金策の中心は少しずつ移っていった。
初代リメイクでは、私もゴージャスリゾートのおじょうさまに何度もお世話になった。
再戦して。
また再戦して。
気がつけば、また再戦している。
そんな日々だった。
百万円という大金が貯まった時は、少しだけ誇らしかった。
けれど不思議なことに、記憶に残っているのは数字ではない。
ゴージャスリゾートへ向かう道や、おじょうさまの姿の方なのだ。
ポケモンのお金は、いつも冒険の風景と一緒だった。
時代が進むにつれ、金策はどんどん便利になっていった。
バトル施設。
バトルシャトー。
道具プリンター。
そして学校最強大会のニンフィア。
可愛い顔で働き続けるニンフィアを見ながら、
「大丈夫かな」
と少し心配になったこともある。
昔のニャースを思い出したからかもしれない。
額の小判を光らせながら頑張っていたあの姿を。
金策の主役は変わっても。
ポケモンたちが私たちの冒険を支えてくれていることは、ずっと変わらない。
黄金色の焼き色。
贅沢なバターの香り。
フィナンシェを見るたびに、私はニャースを思い出す。
額の小判。
金銀のおまもりこばん。
草むらでの泥臭いおこづかい稼ぎ。
どれも遠い昔の話になった。
それでも、冒険の途中で手に入れたお金の嬉しさは今も変わらない。
フィナンシェをひとくちかじる。
その香りの奥で、どこか得意げなニャースが小判をきらりと光らせた気がした。
また次の地方でも会えますように。
優しい風がふわりと吹きますように
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