ピカチュウとケチャップオムライス|原点の味は、30年経っても変わらない

週末の昼下がり、キッチンに立つと、
フライパンからふんわりと卵の甘い香りが立ち上ってくる。  

薄焼き卵に包まれた、真っ赤なケチャップが一本の線のように引かれた、昔ながらのオムライス。  

一口食べると、
甘酸っぱいケチャップの味が懐かしく広がって、  

子どもの頃の、
なんでもない幸せがじんわりと蘇る。  

華やかなデミグラスや濃厚チーズのメニューも素敵だけれど、やっぱり私は、最後にこの素朴な味に戻ってしまう。

そのホッとする佇まいを見つめていると、  

私はいつも、ある一匹のポケモンの姿を重ねてしまう。

そう、世界中の誰もが知っていて、私にとっても永遠の原点である、ピカチュウの姿を。

目次

トキワの森の迷子と、スターミーの衝撃

時計の針をぐっと巻き戻して、まだ画面が白黒だった子どもの頃へ。

初代『赤・緑』を妹と遊んでいた頃、私たちはトキワの森で何度も草むらを往復した。  

めったに出会えないという電気ネズミの噂を聞きつけて、一歩進むたびに胸が高鳴った。

「あ、出た!」  

ようやく現れた小さなドット絵のピカチュウに、妹と二人で部屋の中で飛び上がって喜んだ日の温度は、今でも鮮やかだ。

けれど、そんな喜びも束の間、ハナダジムで大きな壁にぶつかった。  

ジムリーダー・カスミのスターミーが強すぎて、なすすべもなく返り討ちに遭ったのだ。  

今振り返れば、あの頃の無力さすら、愛おしい旅の始まりだった気がする。

ケチャップ好きのスターは、いつも画面の向こうにいた

ピカチュウは、ゲームの中だけのデータではなかった。

テレビアニメの中で、大好きなケチャップを抱きしめて嬉しそうに笑う姿。  

強くて特別な幻のポケモンとは違う、放っておけない家族のような愛嬌があった。

アニメや映画のスクリーンの向こうで、いつでも私たちと同じ時間を生きてくれていた。  

いつの間にか、暮らしの風景に自然と溶け込んでいったのだろう。

姿を変えながら、ずっと隣にいてくれた特別な記憶

長い旅のなかで、私は本当にたくさんのピカチュウたちと出会ってきた。

波しぶきをあげて海を駆ける「なみのりピカチュウ」、  

風船をつけて大空を舞う「そらをとぶピカチュウ」、  

マダムのドレスをまとった「おきがえピカチュウ」……。

姿かたちは変わっても、どの子も私の旅のアルバムを彩る、かけがえのない一ページだ。  

(中には、新しい世界へ連れていけず、泣く泣くお別れした子もいるけれど)

ハクダンの森で出会った、オレンジ色の「先輩」

そんな出会いの中で、今も私の手元にいる特別な存在が、カロス地方・ハクダンの森で出会った子だ。

深い緑の森の中で、初めて出会った「色違い」のピカチュウ。  

ほんのりオレンジ色に染まった体と、ハートの形をした可愛いしっぽ。

出会った瞬間に、子どもの頃の放課後の草むらへ、一瞬でタイムスリップした気がした。  

それから彼女は「ピカチュウ先輩」として、長い時間をそっと寄り添ってくれている。

パルデアの休日、生きている相棒と交わす言葉

今、パルデアの木漏れ日の中で、
私はピカチュウ先輩とピクニックのテーブルを囲む。

30年前、
白黒のドット絵で静かに佇んでいた彼女が、
今は私の目の前で耳を震わせ、  

トコトコと歩いては駆け寄り、
くるくると回ってくれる。  

疲れたら草の上にぽてんと寝転がって、
気持ちよさそうに背中を丸める。

「ああ、本当にここで一緒に生きているんだな」  

その姿を見ていると、
胸の奥がじんわりと温かくなる。

白黒の時代から、
黄色い時代、
そしてオレンジ色に輝く今へ。  

変わりゆくハードの中でも、
彼女はずっと隣を歩いてきてくれた。

2013年に出会ったピカチュウ先輩。パルデアの大地でピクニック満喫中。

主役を譲ったあとの、原点のオムライス

このブログを始めるにあたり、イーブイちゃんが新しい看板になってくれた。  

ピカチュウ先輩の役割は、少し後ろに下がることになった。

けれど、彼女の価値が色褪せることはない。  

むしろ、中央の役割を譲ったからこそ、  

「いつでも安心して帰れる場所」として、より大きな存在になってくれた気がする。

それは、華やかなデミグラスやチーズを味わったあとで、  

「やっぱり、これだよね」と戻ってくるケチャップオムライスの安心感に、とてもよく似ている。

ケチャップのないオムライスが少し寂しいように、  

ピカチュウのいない日常も、やっぱり少し寂しいから。

おわりに|お疲れ様、私の特別な原点

パルデアのピクニックサイトで、イーブイちゃんが元気にスキップしている。  

その少し離れた特等席で、ピカチュウ先輩は相変わらずのんびりとお昼寝を続けている。

その穏やかな寝顔に向かって、私は心の中でそっと語りかける。

「お疲れ様、ピカチュウ先輩。  

これからはここでのんびり、ゆっくり休んでね。  

でも、もし私が道に迷って困ったときは、いつもの笑顔で助けてね。」

別れでも引退でもない、優しい世代交代。  

30年分の思い出を抱えながら、  

今日も私の手元には、甘酸っぱいケチャップのような、変わらない原点の笑顔が優しく灯っている。

四季

お楽しみいただきありがとうございました

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四季

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